2010年8月18日水曜日

今年の夏は、蝉の声があまり耳障りじゃなかった。というか、異常なほどに蝉が少なかったんだと思う。
これは俺一人の意見じゃなく、ここら辺で桃作ってる連中も口を揃える。

梅雨時も”小林麻美”が似合うような雨は降らず、スコールばりの土砂降り。思えば、春に桃の花が咲いてから、雪が積もったっけ・・・。
蝉が少ない周期に当たった年なのか、それとも異常気象に蝉も土から這い出るのをためらったか。

先日夜10時頃、作業場の外で塗装をしていたら、どこかで蝉らしき声が暴れている。
ふと見ると、作業場入り口に作られた蜘蛛の巣に、ヒグラシと覚しき蝉がからまっていた。助けるべきか、自然の摂理に任せるべきか考えたが、ペンキの付いた軍手で拾い上げ、蜘蛛の糸をほどいてやった。

ありがとうの一声でも残し飛び立つかと思いきや、手の中でコロンとしてる。でも死んではいないので、飛ぶきっかけを与えてやれば飛ぶんじゃないかと、子供の頃にそうしたように、空に向かって放り投げてみた。

「ケケケ・・・」って感じに鳴きながら、空中をくるりと旋回した。俺は飛んだと思った。助けてやった甲斐があった。お礼は美人の嫁さんでいいぞ。などと下らんことを思った瞬間、俺の方に向かって飛んでくる。「あっ!」っと声が出たときには、俺が左手にぶら下げていたサゲツ(ペンキ入れるバケツ)にペタっ。

塗料も残り少なかったので、ポチャじゃなくペタっ。

しかたなく、隣のブドウ畑に「ゴメンよ」と埋めてやった。

やっぱ、ヤツは蜘蛛の餌食になるべき運命だったのか。とすると、俺の行為は蜘蛛の大事な物をとりあげちまっただけか。蝉にお礼されるどころか、蜘蛛に恨まれる立場になっちまったか。

あの蝉も最期に「チキショウ」って鳴いたかもな。